戦争の傷跡
お昼寝してる祖父が急に叫んで足を蹴りあげる。
ビックリした〜!ってなるけど割と日常な出来事だった。
祖父はPTSD戦争の夢に苦しんでたんだ…。
私はおじいちゃん子だった。厳しくても優しいおじいちゃんが大好きだった。唯一嫌だったのは戦争の話を聞くこと。今ならもっと聞きたい事、分かってあげられる事もあるだろうけど小学生だった私にはただただ煩わしかった。
おじいちゃんには銃弾跡がある。一発は貫通して、もう一発は自分で傷口をえぐって球を取り出したって。それが出来なかったものは死んでしまったと。さっきまで一緒だった人が目の前で殺される。
もう少しで捕虜になってたかもしれない。
死ぬところだった。
そんな話を何度も聞かされた。聞いてるうちに、はいはいって。もう知ってるよってなってた。
なんて恐ろしい体験なんだろう。おじいちゃんの青春は想像も出来ない程の生き地獄だったんだ。
何度も何度も今の時代は幸せだ。私の悩みなんて、そんな事かと鼻で笑われたっけ…。
私が中学の頃からは祖父とあまり話さなくなって、戦争の話は忘れていた。
そんな祖父が認知症になってしまった。他の病気で入院したとき、夜になると点滴を外して逃げると連絡が入った。
そう、祖父は捕虜にならないように逃げていた。
認知症になっても苦しんでるんだ。愕然とした。戦争の傷跡だ。
もっと話を聞いてあげれば良かった。
日本を守ってくれて、ありがとう。生きて帰ってくれて、私のおじいちゃんになってくれて本当にありがとう。
覚えている事は、子ども達に何度も話したよ。
きっと伝える事は意味があると思うから。